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ワインとかITとかとか。

ソーシャルネットワーク感想

90/100点


非常に熱中すると同時に、多くの苛立ちを抱かされた作品だった。
映画として面白いかというと、面白い。
ガリガリ働いている人、これから起業を考えている人には刺激が強くて大いにお勧めできる作品。
大ざっぱな内容としては、ナードな天才と、常識的な秀才と、貪欲なビジネス山師と、マッチョな体育会系兄弟(後半ほぼ空気だが)の5人を中心にした、起業と信頼関係の崩壊の物語だ。
会話を中心とした非常にスピーディーな展開が気持ちよく、起業時に感じることのあるドライブ感を大いに感じさせる物となっており、熱気とある種の万能感の渦に引き込まれる。
個人的に、仕事上で似た経験=急ピッチでの立ち上げ/発表/次々と反応する数万のユーザー/爆発的に増えていくアクセス数/ニュースと噂の山があるので、当時のいつまでも不眠不休で働ける充実感と熱気を思い出した。
あれは非常に気持ちの良いもので、何度でも体験したくなる。Sha La La えくすたしー!
プロット/物語の進むスピード/音楽/全体的な音のメリハリは非常に良かった。カメラワークは普通。


名言は3つ。
「ハーバードの学生がやるべきなのは他人に雇ってもらうことではなく、仕事を創造することだ」
「あいつらにはできないよ」(ザッカーバーグのウィンクルボス兄弟への発言、うろ覚え)
「あんたの隣にいると、自分が強くなったように思えるよ」(サヴェリンからショーンへの発言)




さて、以上で映画としての感想は終わりで、以降は登場人物についてのコメントを幾つかの視点から書きたい。
ネタバレ全開で、見た人向けの内容・この映画をケーススタディとして捉えた内容なので注意。
最後に映画の英語版台本リンク。


色々書く前に、そもそもこの映画について

コメントをする前に、本作が「事実に基づき、各所に創作を加えた」もので、ある意味フィクションであることを前提としたい。
というのも、脚本家がザッカーバーグ/サヴェリンという主要な2人の登場人物にインタビューを断られ、フェイスブックの協力なしで製作されているので、個人的に脚本家が実際の性格を知っているとは思えないからだ。
なので、以降キャラクターについて色々言うが、それはこの映画のために創作されたキャラクターについてのコメント、としたい。
映画でしか知らない人のことを、悪く言いたくはない。




ザッカーバーグ大好き

まず、冒頭10分でザッカーバーグのことが好きになるかどうかが決まる。
99テイクされたという、高回転で偏執的で他人の気持ちをまるで気にしない/一方で自分の気持ちには異常に繊細に反応する会話。
この会話の速度とせっぱつまりっぷりで、ザッカーバーグ長門のような萌えキャラだと理解できる。
個人的に、ザッカーバーグが大好きになったため、基本的に以降のストーリーはずっとザッカーバーグ贔屓で解釈している。
//超マイナーネタだが、少コミのGO!ひろみGO!(http://www.amazon.co.jp/dp/4592173015)がこんな感じ。東大デビュー痛話。高回転で空回りしていて超お勧め。
ザッカーバーグは話の仕方がわからない/距離の取り方がわからない/気持ちのコントロールができない、しかしどうしょうもないほどの天才プログラマーだった。
だからこそ、彼は自分の気持ちをプログラミング=サイトとしてはき出す。
フェイスマッシュ、フェイスブックの交際ステータス。




ザッカーバーグが友達を失わないためには何が必要だったか

良心的な大人が、感情のぶつかり合いの仲裁をしてくれる人がどこにもいなかったのが、ザッカーバーグの最大の問題だったのだと思う。
主要メンバーとなる3人は既に信頼関係がもつれており、そしてザッカーバーグにはコミュニケーションできるスキルがなかった。
全員とがりすぎていて、ぶつかって壊し合わざるを得ないので、それを仲裁する、ショーンより偉大で良心的な大人が必要だったと思う。
//ザッカーバーグがコミュニケーションスキルの不足と向き合うには時間が足りなさすぎていた。
//現実では、ワシントンポストのCEOが良き相談相手らしいが(なんかの雑誌で読んだ)。


サヴェリンはCFO・共同経営者として何をすべきだったか

サヴェリンのとった行動は2点を除いておおむね正しかったと思う。
1つはショーンをコントロールしなかったこと。
ザッカーバーグがショーンを進行してしまった時点で=ファンドを紹介してくれるビジネスパートナーとして切り離せなくなった時点で、彼はショーンのコントロールを担当するべきだった。
感情的な反発から、ショーンの違法な行動を放置することがフェイスブックにとってのリスクになることは十分にわかっていたと思う。
ザッカーバーグとの関係が悪化+ザッカーバーグが自分より頼る人間を見つけたことが消化できなかったのだろうか。
もう1つは、口座の凍結をしたこと。
あれは行動する前に、明確に最終通告をすべきだった。
明確にザッカーバーグとの関係を壊すと決めたとしても、共同経営者としてはやってはいけない行動だ。
また、フェニックスに入るかどうかが、ザッカーバーグと今後もやっていくかどうか、との2択になっていることは感づいていたとは思うが、それでも両方ともとろうとしてしまったのは仕方ないとはいえ失敗だったと思う(間違ってはいない)。
メンヘルビッチと付き合ってしまったことについては、事故みたいなものだ。
本質的には、ザッカーバーグに振り回されて、ショーンにかき回された善良な秀才で良い奴だ。


ショーンはアリか?

さて、一番腹立たしくて苛立ちを感じたのはショーンだ。
メンバーの中では一番ビジネス経験が豊富で、しかしその癖ザッカーバーグ以上に利己的で幼稚な行動をとる。
頭の良いカリスマ山師というのが適切な表現で、確信犯的に問題の種(しかしシリコンバレーウォール街では時々あること)をまき散らしていく。
彼がビジネスの天才ではあり、ああした振る舞いこそが彼のモチベーションだが、最終的に致命的な問題を引き起こすことを考えると、いくらパフォーマンスが良くても非常にリスキーだ。
実際に映画の最後のコカイン問題で、彼はフェイスブックの社長を退任している。
//なおザッカーバーグにとっては、ショーンは初めて出会った素晴らしい神だ。
//そのため、ザッカーバーグは神の愚かな行為を知っていても、その信仰から否定することが出来なかった。
//後半、恐らくサヴェリンの最後の振る舞いの影響で、100万ユーザーパーティに参加しなかったのは、その認識を改められたのではないか。






ところで実際こういう人間関係のもつれで酷いことになることはあるの?

うん、普通にある。
私も直接間接含めて、2回経験してる。会社がひっくり返るレベルで。
個人的に、起業の際に必要なのは、十全のビジネスプランと、それと仕事を超えた信頼関係の構築/構築できるメンバー・体制の構成だと思う。
起業はビジネスでしないが、ただのビジネスとしてやっていると必ず破綻する。
上手く起業する際は様々なプロフェッショナルが集まって起業するが、彼らを悪い意味でプロフェッショナルとして扱うと、つまり仕事を振ればやってくれる装置としてやっていると、目に見えない摩耗が発生し、どこかで爆発する。
このあたりはHashさんのエントリーに近いことが、どうプロジェクトメンバーを纏めていくかが書かれているのでそちらが参考になる。
気分屋プログラマと新人マネージャの憂鬱 - プロジェクトを炎上させないために : ミームの死骸を越えてゆけ






今回のオチ;
なんか見つけた英語版全台詞のpdf
http://www.justmystage.com/home/mako0320/thesocialnetwork_screenplay.pdf
「Everyone at Harvard is inventing something.
Harvard undergraduates believe that inventing a job is better than finding a job so I’ll suggest again that the two of you come up with a new new project.」