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ワインとかITとかとか。

15万のワイン会最高ッ!最高ッ!最高ッ!

http://anond.hatelabo.jp/20150809140357
■高い食事ってなんなの

3行で  


・15万の食事は好奇心で食べに行く
・食べに行くというよりは、未知を経験しに行っている
・高い食事はシェフの人生を食べている
・増田の「コスパ」のパフォーマンスに未知は組み込まれているのか






高い食事について  


エンゲル係数がめちゃくちゃ高い生活をしているので、色々考えてしまうところ。
具体的な話をするのが面白いと思うので、昨年=2014年一番美味しかったワイン会、ロマネコンティ会について語りたい。
まずはワインと料理のメニューの紹介から。






〜ワイン〜

NV セロス・パジョン ブラン・ド・ブラン・グラン・クリュ・アヴィズ
1995 テタンジェ コント・ド・シャンパーニュ


1995 ラモネ バタール・モンラッシェ
1996 ドメーヌ・ルフレーブ ビアンヴニュ バタール・モンラッシュ
1996 ドメーヌ・ルフレーヴ シュヴァリエ・モンラッシェ
2011 ラモネ シャサーニュ・モンラッシェ モルジョ


1991 DRC ロマネ・コンティ
1999 フランソワ・ラマルシュ ラ・グランド・リュ
1986 ルイ・ラトゥール コルトン
1981 シャトー・マルゴー




〜料理〜
アミューズブーシュ
キャビアと毛ガニのサラダ仕立て ブリニ添え
蝦夷鮑のコンポート
蛤のジュにフレッシュハーブの香りを乗せて
リ・ド・ヴォーのムニエール リヴザルトのソース
舌平目のスフレ“クレオパトラ
新潟産青首鴨のロースト サンチュベールソースト リュフ風味
フルムダンベールの泡雪と白トリュフ
みかんのコンポートとハチミツのアイスクリーム ラビオリ仕立て
コーヒーとプティフール

(鮑)

(みかん)




〜お店〜
お店は銀座レカン。
現在休業中で、2017年に再開予定。
http://tabelog.com/tokyo/A1301/A130101/13002444/




〜会費〜
ワイン・料理で15万円。
内、料理が確か3万円だったはず。




原価的な話をすると、上記10本のワインの小売価格合計が160万程度なので、参加人数で割るとほぼワインは原価で飲ませていただいている。
料理は3万円にしては凄まじく原価率の高い材料を使っている。原価率50〜60%くらいありそう(通常の原価率は20〜35%)。






どうして参加したのか  


ロマネコンティは以前2008年を飲んだことがあって、それは力強く精悍な方向性で非常に素晴らしかったが(艦コレの長門のイメージ)、その熟成した状態を飲んでみたかったため。
また、評判の良い銀座レカンの料理を一度食べてみたかったため。
つまるところ、今まで飲んだワインや料理以上の先が見たいという、興味と好奇心。






とはいえ食事に15万って馬鹿じゃないの?  


15万あれば色々な事が出来る。
ラップトップ新調したり、4kモニタ買ったり、エロゲ20本かったり、BD-BOX5タイトル買ったりできる。
105フルカーボンのロードバイクだって買えるし、1週間くらい海外旅行に行くこともできる。
半年分程度の書籍代にもなるし、はてなスターが25,600個も買える!


とはいえ、このワイン・料理の組み合わせで飲む機会・食べる機会はこのタイミングしかない。
いつものワイン会のメンバーで、今まで飲んだワインの経験を踏まえて飲み、話が出来る機会を逃がしたくない。
という一期一会の会なので、他の何かを全て後回しにしてでも参加したい会だった。






ワインと料理はどうだったか  


食事会から10ヶ月しか経ってないが、今でも鮮明に良かったワインや料理の味が思い出せる。




〜ワイン〜
まず第一に話さなくてはいけないことは、ロマネコンティは期待したほど美味しくなかったことだ。
香りは素晴らしく、ブーケやらラズベリーやら飲み物の域を超えたブルゴーニュワインのレベルだった。だが、残念ながら果実がやや弱く、酸も少し立っていたので、味わいはエレガントさを感じさせるものの線が細すぎて期待には達していなかった。
とはいえ、素晴らしいと絶賛していたメンバーもいて、グラスを交換して飲んで確認もしたので、ボトル内の飲む場所の問題(何杯目に注いだグラスを飲むか)だった。サーブ自体は完璧だったので、運の良さの問題だった。残念。


とはいえ、他のワインの中で素晴らしいワインはあった。
ラマルシュのグランリュの圧倒的で独自・妖艶な世界観、要素が完全に調和して静穏さを感じるラトゥールのコルトン、熟成感と果実味の均衡した熟成のピークに達していたマルゴー。
1度のワイン会で、こうした飲み物のレベルを超えたワインに複数本当たることは希だ。


こうした素晴らしいワインは、香りと味以上に概念を感じさせてくれる。
薬でもキメてるのかと受け止められる発言だが、残念ながらワインを飲んでいるだけだ。
眠っていて夢を見るときに、現実的でない抽象的な夢を見たときに感じるようなもの、それを芸術家が直接感じている概念をそのまま感じられるような経験をできるのが、ずば抜けて素晴らしいワインの特徴になる。
「完全な球体」というのは素晴らしいワインの感想として時々使われる言葉だが、実際そうした概念・イメージを感じるので、そうとしか言えないのだ。




〜料理〜
今までそれなりに色々な料理を食べていて、フレンチについてはモダンもクラシックも食べ歩いている。
そうした中で、このレカンの、つまり高良シェフの料理はクラシカルに分類されるが、味わいはモダンとクラシカルを融合させた高みにある味わいだった。
素材の力と、それをまとめるソースとセンスの全てがずば抜けている。


特に良かった料理の解説を。



キャビアと毛ガニのサラダ仕立て ブリニ添え
敷き詰められたキャビアの下に、毛蟹のサラダがある。
キャビアは1口で沢山食べる方が美味しいが、この料理は何度も山盛りのキャビアを食べることが出来る。
毛蟹の役割は素晴らしく、キャビアの味わいを包み込むような柔らかさを提供し、一体となっている。





・リ・ド・ヴォーのムニエール リヴザルトのソース
リ・ド・ヴォーは牛の胸腺(仔牛の時にだけある乳を消化する酵素の出る内蔵)。肉ではあるが、肉の要素を感じさせないふわっとした柔らかさで、まるでノドグロのような味わい。リヴザルトという甘口ワインの軽く泡立てられたソースが柔らかにリ・ド・ヴォーに染みこみ、途方もなく美味しい雲を食べているかのような気分になる。





・舌平目のスフレ“クレオパトラ
(恐らく)舌平目とオマール海老を組み合わせて蒸し、それをオーブンしてからソースをかけてバーナーしている(はず)。舌平目の強い白身魚の甘み、オマールの強い旨み、そしてバターと生クリームをふんだんに使ったコクと凝縮感のあるソースが口の中で圧倒的な広がりを見せ、しかし喉を過ぎるとまるでバターやクリームの重さなど存在しなかったかのようにふんわり消えていく。
全て強い食材を使っていて、味わいも複雑で重厚であるにも関わらず、恐ろしく軽やか。
この日の料理はどれも絶品だったが、その中でも1位をつけるならこの料理だった。





・新潟産青首鴨のロースト サンチュベールソース トリュフ風味
鉄砲ではなく網で捕った鴨(より状態が良い)をローストし、鴨の油と赤ワインからつくったソースをかけ、トリュフを添えたもの。鴨は通常の鴨より明かに美味しく、脂には甘みが、肉は野性味が溢れ、素材の生命力を感じる。





・フルムダンベールの泡雪と白トリュフ
パワーof食材だが、この合わせ方が素晴らしい。




こうした料理は極めて手が込んでいて、レシピの検討、素材の選定、調理、ワインとのマリアージュの調整と、膨大な変数をコントロールして作られている。
お店の力(調達力やワイン資産など)、シェフのセンスと経験が注ぎ込まれているのだ。


それはある意味では、シェフのセンスとこれまでの人生を食べている、とも言える。


個人的に高い食事は読書に似ていると感じている。
読書は作者が長い時間をかけて考えたものの結晶を味わう行為だと僕は考えていて、料理はそれと同じだ。
読書と違うのは、センスがある人が時間を重ねればそのレベルが着実に上がっていくところだ。
自分の行く店だと天麩羅屋の美かさがまさにそれで、70近い職人のおじい様が、恐らく20代から学んできた50年分の技術を注ぎ込んで天麩羅という概念を覆される天麩羅を作り上げる。
この天麩羅が2時間で1万円というのは、果たして高いのか安いのか、判断が付かない。
1食の値段としてはもちろん高いが、あの味わいの経験としては安いし、おじい様のそれまで積み上げてきた技術を考えると飛び抜けて安いと感じている。






15万の食事で何を得たのか  


まず第一に当初の興味と好奇心は満たされた。
次に、ロマネコンティの状態についての知識が深まり、次に飲むときはより精度高く美味しいものを飲めるようになった。
3つ目に、ラマルシュのグランリュというブルゴーニュグランクリュでも特異な世界観に出会うことができた。
4つ目に、美味しいフレンチを色々食べてきた中でも圧倒的にレベルの違う高良シェフの料理を味わうことが出来た(結果、モダンフレンチよりはグランメゾンを巡るようになった)。そしてそうした背景となるフランス料理の歴史やら調理にさらに興味をもった。
5つ目に、このワイン会のことを思い出すたびににやけて、iPadで写真を見返して味を思い出し幸せに包まれている。


また同じような金額の会があっても内容が良ければ食の探求のために行くううううううう!!!!!!







増田について  


正直なところ、レストランで出てくるような美味しいものには興味がない。うちの店のメニューで十分じゃん、と思っている。

興味がないのなら必要以上に批判しなければ良いと思うけど。



しかもレストランで食べようとすると、それなりに時間がかかってしまう。時間がもったいない。

栄養価を得るために食事をしているのではなく、喜びを得るために時間をかけて食事をするという価値観もある。



なんでこんな前時代的なものが未だに有り難られてるのか謎すぎる。

美食は昔からずっと続いている文化で、前時代的と言うよりは普遍的な文化だと思う。
現代的な文化、つまり何だ・・・? CPUのオーバークロックとかか? はそれはそれで面白いと思うけど、個人にとっての文化の優劣がその歴史によって評価されるのはおかしいと思う。
歴史がある文化は色々と素晴らしい要素を蓄積しているし、若い文化は鋭さが面白い。
そして高いワインや食事は、今まで長く蓄積したものを踏まえた上で、現代的な調理やセンスといったその先の物を追求しているから、歴史と若さの両方がある文化だと認識している。
(レカンはガストロノミーの店ではないけど)




思うに、増田はコスパのパフォーマンスの尺度を自分が既に認識するものだけに留めてしまっているのではないだろうか。
料理であれば未知の味わいや香り、何らかの概念や感情を想起させることがあり、それは一般的な食事の延長線上にはないものだ。
小説を読んで、この本のコスパが良い悪いと言わないような話に似ている。
もちろん小説同様に、こうした食事は生きるために必要な要素ではないが、それを追求して楽しんでいる人はいるのだ。


あまり時間とお金をかけたくなくて、ある程度未知の物を知りたいのなら、渋谷のお鮨屋さん・やじまに行って、ランチ3500円のコースを食べてみると良い(関東じゃなかったらごめんなさい)。
時間は10〜15分程度で終わるし、栄養や満腹以上のものがある。
(10分前でもいいから電話で要予約。店/店主に癖があるので合わないかもしれないけど。まあそこは仕方ない)
http://tabelog.com/tokyo/A1303/A130301/13014691/
回転寿司に2,3回行くのと、やじまに1回行くのと、どっちが良いか行ってから考えてみて欲しい。






増田へのトラバやブコメについて  


高級レストランは空間を味わうものかな。
食事じゃない 雰囲気に金を払っている

高くて空間がいいだけで味がイマイチな店は確かにあるけど、そういう店ばかりじゃないから・・・
味も雰囲気もサービスも良くて価格に見合った店はある。
例えばモナリザ丸の内店とか(昼夜どちらでも一番高いメニュー推奨)。
http://tabelog.com/tokyo/A1302/A130201/13000302/



客層に金を払ってるんだよ。金持ちは下品で騒がしい貧乏人と一緒に飯なんて食いたくないから。

価格ではなく店のジャンルを選べば客層は変わるので、これは的外れの印象。
もちろん価格帯を上げれば客層は良くなるが、騒がしい人、カメラで撮影しまくる人などは時々見かける。
飲み屋の価格帯で行ける客層の良いフレンチとして、渋谷のラ・ブラッスリー シェ松尾を推したい。
http://tabelog.com/tokyo/A1303/A130301/13001926/
デリスコース+ワイン1杯で4000円程度。デパ地下B1でワイン買って持ち込めるのも素晴らしい。



「高い金出して飯を食う」って行為に高い金出してるんだよ

先日そういう考え方の人と食事に行ったが二度と行かない。
少なくとも自分の身の回りでは、こうした人間はごく僅かだし、いたとしても付き合わなくなっていく。
一方で、高い金額を出した食事をボロクソにけなすこともある。
あの天麩羅屋許さん・・・(前述の美かさとは別の店)






   


「僕が失った心が、君の中でまだ生きてる。それが君に必要であることも、僕が望んで君にそれをあげたのも分かってる。でも、もう、それしかないんだ。僕に残された本当の心は」
「悪夢を消したい。砂漠から出たいんだ。そのために僕は心を取り戻して、僕を砂漠に追いやった全てを壊してしまいたい」
「だから・・・・・・僕が君にあげた腎臓を、食べたい」

//冲方丁  オイレンシュピーゲル 03 参 Blue Murder






   


余談だけど、普段の食費は1日500〜1000円です。メリハリ大切。