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熟成ワインのサービスについて


色々とレストランに伺ってワインを飲んでいて気づいたことの1つに熟成ワインのサーブ問題がある。
熟成ワインは澱があることが多く、その為扱いが若いワインとかなり異なるのだが、これが店毎にどうサーブするかかなり異なっている。
そして残念なことに多くの店のサーブは今ひとつで、まだボトルの半分程度しか減っていないのに、澱が混じるような状態になることが良くある。
折角熟成したワインを開けているのに、その扱いの悪さ故に今ひとつな味わいになるのは大変残念なことだ。
(澱の部分が美味しいことも多いが、一般的には澱は避けるべきだ)
ソムリエの方々も悪気があってやっている訳ではなく、単純に知らずに、もしくはイマヒトツな方法を正しいと信じてやっているようなのであまり責めるわけにもいかない。


というわけで、現状の僕が知る熟成ワインを最良の状態で飲めるサーブについて記述し、少しでもこの方法でサーブしてくれるお店が増えることを願いたい。
重要なのはワインの液体を最優先に考えて、とにかく液体を動かさず優しく扱うこと。






INDEX  


1. 熟成ワインの準備
2. グラス置き場の準備
3. キャップを取り除く
4. 抜栓、ソムリエナイフの選定
5. 注ぎ方
6. 注ぎ足しについて
7. デメリットとオプション






用意しておく道具  


・パニエ
・ソムリエナイフ3種(2段式、ラギオール、ザ・デュランド)
・ドロップストップ
・クロス


http://www.wineac.co.jp/chateau_laguiole.html

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1. 熟成ワインの準備  



熟成ワイン(ついでに一部の自然派ワイン)は澱があることが多く、その澱を安定させるために立てた状態で、若しくはパニエに入れた状態で置いておく必要がある。
澱が大きな固まったものの場合は数日程度で問題ないが、細かく軽く舞っている場合は2週間程度(酷い場合は4週間程度)置いておく必要がある。


なお液面の濁っているもの、吹いた跡があるものは状態が悪いことが殆どなので、予備のワインを用意しておく。
液面が低かったり、キャップシールが回らないのは大きな問題ではない。

これは全く澱がなかったけど(笑) 澱がなくてもパニエを使って抜栓した方が良い。


澱や液面の透明度は、こうした自転車向けの高輝度のライトで照らすと一発で分かる。
ソムリエ向けのチャチなLEDは役に立たないので買う必要は無い。
ロード乗り兼ワイン好きという属性から発見したが、マジで自転車用LEDライトは古酒に良い。






2. パニエ、グラス置き場の準備  


熟成したワインを飲むときはパニエを利用するのが最良となる。
理由は2つある。
1つは抜栓の難易度が幾らか下がり、かつ抜栓に失敗したときもリカバリが比較的容易になること。
2つめは通常より傾ける角度が少なくなるので、澱が舞いにくくなることである。



また、サーブするためにグラスをまとめておく。
その為のグラス置き場を作っておく必要がある。
人数が多いとグラスも結構な数になるので、それなりのスペースが必要。
レストランでよくパニエを持ってサーブするソムリエを見かけるが、あれではパニエを利用する意味が殆どない(揺れて澱が舞ってしまう)。






3. キャップシールを取り除く  



ワインボトルをパニエにセットし、液面がコルクに触れないように角度を調整する(クロス等で)。
ここから最初にすることは、キャップシールを全て取り除くこと。
若いワインであれば先端だけ取り除くことも多いが、熟成ワインは全て取り除いた方が良い。
全て取り除くことによって、コルク抜栓時の状況がより明確に見えるようになり、抜栓失敗の確率を減らすことができる。
(ついでに、液だれした場合にキャップシールに液体がとどまらなくなり、清潔さが維持できる)



キャップシールを取り除いたら、コルクやボトルに付着しているカビなどをクロスで綺麗にする。
この時に絶対にボトルを回転させてはいけない。






4. ソムリエナイフの選定、抜栓  



熟成ワインを扱う上で最も難しいのが、この抜栓となる。
基本的にコルクの破片は液面に落としてはいけない(個人的には小さな破片1,2個が上限)。






コルクを軽く触るなどして、どのソムリエナイフを使うかを考える。
ソムリエナイフの候補としては3つある。
・プルテックス等の2段式
・ラギオール等のスクリューが強いもの
・ザ・デュランド(かなりコルクが弱っている時専用)
コルクが比較的しっかりしているのなら2段式を、多少弱っているようならコルクをしっかり捕まえられるようラギオールを。完全にやばそうならザ・デュランドを使う。
フランスの上質なコルクを使った20年熟成のワインであれば、二段式かラギオールが適当。
オーストリアなど酸の強い産地のコルクは劣化が早く、また昔のカリフォルニア等ニューワールドのコルクはかなり品質が低く劣化してるので、こうしたワインはラギオールかザ・デュランドかを状態によって選択する。



コルクにスクリューを差し込む際は、コルクを落とさない為にも押し込むような力のかけ方をしてはいけない。
スクリューが回転するに任せて、コルクに入っていくようにする。
適時ペンライト等(客前じゃないならiPhoneでいい)でコルクを照らし、コルクとスクリューの状態の把握を行う。


コルクが劣化しているので、スクリューを入れようとするとコルクの表面が大きな破片となって割れることもある。表面が多少割れるのは問題なく、またこうしたコルクにはラギオールが適切となる。
40年以上熟成していて乾燥がちな場合、コルクの表面が細かくサラサラと粉のように崩れていく場合がある。極めて慎重にスクリューを回していけば割と刺さるので、慎重に進めること。この場合はザ・デュランドが抜栓に適している。
どれだけ回してもスクリューが入らず、トンネルを掘りそうになることもある。この場合はラギオールを上手く使って、できる限りコルクの形を維持できるように、力のかけ方やかける方向を工夫しながらなんとか刺していく。



コルクの状態を見ながらスクリューをゆっくりと回し、コルクを突き破ってスクリューの先端が少し見えた程度で止める(ここでスクリューを早く回していると突き破ったコルクの破片が液面に落ちるので注意)。
スクリューを回すときは、一緒にボトルが回らないようにボトルを固定しておく。
スクリューの先端がコルクの先から見えた状態で、1~2分程度時間を置く。
これは熟成によりボトル内が陰圧になっているため、すぐに抜栓しようとするとコルクが内側に引っ張られ、断裂しやすくなるため。
時間をおいたら、ゆっくりとゆっくりと力をかけて抜栓をしていく。
ラギオールを使っている場合は、コルクにできる限り曲げるような力をかけないために、適時スクリューを回して高さを調整していく。


コルクの抜栓が終盤になると、途中で割れたり、先端だけがボトル内に残ったりすることがある。
この時点でコルクはある程度上昇しており、その残りもボトルのある程度の高さまで来ていると予想される。
そうした場合は、スクリューの強いラギオールで、残りのコルクをしっかり捕まえて取り除く(形状によってはボトルの内壁に押しつけるようにして取り除く)


抜栓後、クロスでボトルの口周りを綺麗にする。
(絶対にボトルを回転させてはいけない)


抜栓の過程で、コルク片が液面に落ちてしまった場合、ピンセットや長いスプーンで取り除く。






5. 注ぎ方  




パニエ・ボトルをできる限り動かさずに注ぐ必要がある。
まず、机の縁にパニエを移動させる。
そしてボトルとパニエをしっかり固定するように持ち、パニエの底の前面を机に付けたまま、後部を持ち上げて下に持つワイングラスに静かに注いでいく。
注ぎ終わったら、静かにパニエの後部を下ろし、次のグラスに注ぐ。
澱の状態次第だが、50〜100mlは澱部分としてボトルに残すことになるので、その量を想定して注ぐこと。
澱のある部分は、澱のない部分を飲み終わった後に希望者が飲んだり、別のグラスに入れて香りの比較に使ったりする。


全てのグラスに注いだ後に、グラスを席に持って行く。


なお、12人にサーブする場合、約55mlづつ注いでいく方法と、27mlづつ注いだ後にもう1度27mlづつ注ぐ方法がある。
後者は味の均質化を目的として行われるが、ボトルの上下が増えるためやや澱の危険性が高まる。



なお、クロスで液だれを拭くよりも、ドロップ・ストップを使って滑らかにサーブした方が楽で清潔なので、使った方が良い。熟成して泡が少なくなっているのならスパークリングワインでも使える。






6. 注ぎ足しについて  


1度のサーブで注ぎ終わらない場合、注ぎ足しをすることになる。
この場合は、パニエを持ち上げて該当者のグラスに注ぎに行くのではなく、一言断りを入れてからグラスをパニエのところに持ってきて、パニエを動かさずにサーブする。
(ここで「こちら注ぎますね」といった断りを入れないと、グラスを下げられたと勘違いしてトラブルになりやすい)






7. デメリットとオプション  


このパニエを使ったサーブの問題にも問題はある。
1つめは液面がほぼ揺れないサーブになるため、ボトル上部・中部・下部でかなり味が違うことが出てきてしまうこと。これはある意味仕方のないことで、また数度に分けて注ぐことで多少のカバーは可能である。
対策としてはデキャンタを使う方法がある。澱以外の部分を一度デキャンタに注ぎ、それからグラスに注ぐことで均質化することが出来る。但し、幾らかエアリングされてしまうため、繊細な熟成ワインでは味が変わる可能性が大きい。この方法を使う場合は、できる限り小さなデキャンタを使うこと。






おまけ  


恐ろしいことに、古いワインを開けるのは、重要なイベントや顧客であることが多く、抜栓の難易度と失敗の許されなさは比例する。
抜栓が難しいワインであればあるほど、抜栓に失敗することが許されないのだ。
そうした時に失敗しない為に、それまでに上手い人のやり方を見て学び、コルクが大いに弱ったボトルの抜栓をして練習して、いつかの日に備えておいた方が良い。


マグナムではだいたい付属している木箱をパニエのように使ってサーブすると良い。
上部と下部でまるで味が違うので、マグナム1本で1人グラス2脚用意し、それぞれ上部・下部を注いでサーブすると大変喜ばれて評価されると思う。



こういうサーブ器具もある。
右側のハンドルを回すとボトルが傾いていき、最低限の上下移動でサーブが出来る。
振動も抑えられて良いが、サイズが大きいのが悩み所(笑
(エルキューイ ワイン デキャンティングマシーン ERC2444SVが現行品?)


自宅等で飲んで、余ってしまった場合・翌日も飲む場合は窒素スプレー+アンチオックスでかなり酸化を防げる。




ちなみに僕のやり方は基本的に藤巻さんから学んだものです。
www.firadis.co.jp