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ワインとかITとかとか。

ワインの価格上昇とこれから日本酒に起こること 補足とコメント

ありがたいことに前の記事に多々コメントいただいたので、ダラっと補足/コメントします。

なお、あの記事の趣旨は「かつて当たり前だと思っていた幸せが消えるという感傷」です。

 


>日本酒関係

 

>日本酒の売上は右肩下がり

他の方がコメントいただいてるように、低価格帯の普通酒は右肩下がりで、特定名称酒は需要が上がってます

jp.sake-times.com

”<グラフ3>をみてみると、「特定名称酒」については2010年を境に増加傾向にあることがわかります”

 

>輸出量

2016年で全体の3.5%ながらも、5年間で2.5→3.5に1%増加しているので、ウィスキーのような海外でのブームが起きればかなり伸びしろはあるかと。

jp.ub-speeda.com

(3つめのグラフ)

 なお、業界の先駆者たる獺祭は、2019年に入って売上の半分以上が海外になりました。

 

 

酒米について

1つ目は生産量で、記事の対象とした特定名称酒が好んで使う山田錦については、2013年頃?まで作付面積が激減していたところを、酒造好適米減反枠の解除によって増産が可能になりました。

現状ではやや供給過剰分が出ているそうで、次のボトルネックが蔵の生産能力に移ったのか需要の問題なのか品質なのか、どういうことなのかは不明。

なお、2018年は凶作で、平成の米騒動並に収穫量が落ちました。

www.ricepier.jp

余談になるけど、今年の夏頃から多くの鮨屋はこの米の影響でかなり不味くなります(鮨屋は古米使うので影響が1年遅れる)。今の印象では、一部の米以外旨味が無い、悪い場合では変な苦みのある味になってます。

 

2つ目は品質で、米の品質が低い年は日本酒も美味しく無いです。

ワインと比べて日本酒の年毎の味の変化が目立ちにくいのは、恐らくワインのように年違いで飲み比べることが少ない/(不適切な保管による)熟成による変化の方が年の変化より多すぎて、比較が難しいからかな、と想像しています。

そうした状態をクリアした状態で日本酒をテイスティングしたことが1度だけありますが、特上率が高い年の酒と、そうでない年の酒は全く味が違いました。

ワインが産地毎のVT(vintage)レポートを出すように、日本酒も米の産地毎のVTレポートを毎年出すと、昨年の違いを考えるきっかけになって良いのではと思いますというか、僕が読みたい。

f:id:nanoha3:20190423052833j:plain

(個人的に2013,2014が素晴らしく美味しかった)

なお、東条産をはじめ、田んぼのブランド化も今後進んでいくと予想してます。

獺祭がなんかやってるし。

www.asahishuzo.ne.jp

個人的には雄町をもっと増やして欲しい・・・



>酒蔵

日本酒の値上がりは酒蔵にとっては良い話・・・になるはず。

日本酒は流通ルートで値段が完全に固定されているので(ワインは業者次第)、蔵本が価格を上げればきちんと酒蔵にお金が入る・・・はず。

ただ、海外輸出は流通業者側の努力でもあるので、その辺酒蔵に入るかどうかは不明。

ワインだと、流通業者が生産者から安く買って、めちゃくちゃ高くして売るとかがあります(だから某ムルソーは現地で直ルート ?で売られた店で飲むと超安い)

なお、酒蔵側が価格を上げずにいるのはもちろん自由だが、売れて価格を上げた酒蔵に仕入れ・設備投資等の面で負けるので、相対的に味が落ちていくという結果になる可能性もそれなりにある。あと従業員の給与の話。



>流通での温度管理

ワインはほぼリーファーコンテナ(-20~20度の定温を維持できるコンテナ)で流通してるので、日本酒も基本的にリーファーで動かせば済む話。

流通経路では、店頭以外はほぼ問題にならない(既存のワインや生鮮食品の流通にほぼ乗せられる)はず。

ヨーロッパは室温が低いのでワインセラーとかが店頭に無いので、ショップに冷蔵庫を置く必要があり、これは少し大変そう。

冷やしたシャンパーニュを用意してるお店とかは、そこに入れればとりあえず売れるけど。

 

 

>日本酒の熟成

個人的にはフレッシュな日本酒が好きなので、ワインのように酒蔵訪問してタンクから飲めるツアーやってほしいと思ってます。

一方で十分に管理して氷温熟成した日本酒も美味しいし、そうでない熟成した日本酒もそれはそれで美味しいです。

前者はなかなか飲むのが難しいけど(菊姫とか?)、後者は酒茶論が閉店してたあああああぎゃあああああああああああああああ

tabelog.com

 

>海外の蔵

ご存じのようにカリフォルニアとか、海外での日本酒醸造も割と出始めている状態です。

スケーラビリティが日本と違うはずなので、そこは怖いところ。

日本産の高級日本酒を輸出して、海外産の低価格日本酒を輸入する未来もあり得る。。。

 

 

>ドメーヌソガの日本酒

あれは安すぎるし美味しいし素晴らしい。

色々酵母で遊んでいるのも面白い。

ソガのワインはあまり美味しく無いのでもう買ってないけど、日本酒は毎年買ってる。悲しい。

 

 

>パリでは芋焼酎も冷やして飲むんか・・・?

多分売ってる側も分かって無くて、日本酒の業者から仕入れたものを、まとめて日本酒用冷蔵庫につっこんでるだけだと思います。

まあ悪影響は無いので良いかと・・・ 常温で飲んだ方が美味しい銘柄もあると思うけど。

 


>日本酒おじさん
他人の酒の好みに難癖つける日本酒おじさん、ホントにいるし、ホントにあーだこーだ言ってくるからびっくりする。

こういう人が日本酒の消費量を減らしている(居酒屋等の空気悪くしている)要因の1つ。

「ミーハー」「大手酒造」「獺祭」「アル添」「カプロン酸エチル」あたりが嫌いなのは分かったから、壁と話しててくれ。

 

 

 

>ワイン

 

EPA

EPAの関税撤廃はボトル100円程度の影響なので、1500円以下のワイン、特に超低価格のパック酒には影響が大きいです。

2000円超してるものにはほぼ無関係です。

 

>国産ワイン

個人的にごく一部の生産者以外、あまり未来はないかなと思ってます。

現在の国産ワインブームが終わったら、酷いことになるじゃ無いかなと。

基本的に安くてまずいか、高くて味はそこそこだけど同価格の海外品より劣るか、高くて美味しいけど生産量少なすぎて全く手に入らないかの3パターン。

今の国産ワインを追っかけているファンは、国産ワインだけ追いかけていて海外のワイン(コスパのチリ、カリフォルニア、スペイン、南ア)をあまり知らないので、今後その辺を覚えたら味と価格の面では国産に戻れなくなります。

日本人でワイン作りたいのなら、基本的に海外に行った方が良いです。

NZ、ボルドーブルゴーニュ、カリフォルニアなどなど、美味しいワインを作る日本人生産者は多いです。

 

>寝かしてたオーパス

オーパス、この5年で値段倍になったので、高く売れますよ・・・

最新の2015が6万円ですもん。

 

 

>フランス産ワインにこだわりすぎ。チリ産の方が良い場合も多々ある。

3,000円以下のボルドー品種や、白ワインなら肯定。

ピノシャルドネについてはブルゴーニュに比肩する産地は、カリフォルニア・オレゴン・ドイツの極々一部にしかなく、比肩できてもブルゴーニュの普通の作り手のグランクリュ程度。

熟成ワインが弱いのも問題。


ウイスキー

 

幾つかコメントいただいたように、「これから日本酒に起こること」は既にジャパニーズウイスキーで「起こってしまった」ことです。

過去飲めていたジャパニーズウイスキーは、手の届かない存在になりました。

kaitori.e-daikoku.com

宮城峡が10倍に高騰したのは知らなかったけど、まあそういうことになってしまった訳です。

ウィスキーはワインより遙かに供給側の問題が大きいため、今高くなっている銘柄が今後20年以内に安くなることはほぼ無いでしょう。

宮城県の人が地元のウィスキーを飲めることは、かなり難しくなってしまったという、そういう寂しい話です。

 

一時期の芋焼酎や、カカオ農園も同じ話です。





>ドラ鳥

3月に訪問したから使ったんじゃい!

まさか3時間も並ぶことになるとは思ってなかった・・・