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魔法戦争批評〜もしかして今後のラノベアニメはアニメオリジナル展開が必要とされるかも〜


要約;  


自分のTL上で大人気だったアニメの魔法戦争を全話見て、原作と照らし合わしつつ問題点を考える話。






前提;  


・元々アニメは1話で切ってたが、盛り上がってたので見た。
・この手の作品はよく見ている。ガリレイドンナ、弁魔士セシル、フラクタル、脳コメ、ガンダムAGEなどなど。脳コメは後半凄く良かった(良い意味で)。
・原作のスズキヒサシ作品はリネア様の評判を聞いてタザリア王国物語を全部読んでいる(打ち切りになったが非常に面白かった)。魔法戦争はアニメを見た後に、原作全巻読んだ。というか魔法戦争スズキヒサシ原作だと知って驚いた。






アニメの魔法戦争の問題点  


アニメの魔法戦争は視聴者に絶大なインパクトを与えて終わった。
 『魔法戦争』12話(最終回)感想 来週もまだ放送する気がしてしまう最終回だった http://otanews.livedoor.biz/archives/51984509.html
第1話からツッコミネタ厨二アニメとして注目され、その後多くの脱落者をだしながら、投げっぱなしエンドという凄まじいありようの本作品は果たして何が問題だったのか。
トーリーと表現の2つの面で見てみる。


トーリー
魔法戦争のストーリーで問題となっているのは下記4点である。ストーリーの各要素は面白い要素がありつつも、詰め込みすぎて失敗している。
・投げっぱなしの終わり方:ラストバトル後に主人公が過去の世界に飛ばされ、そこで過去の知り合いと仲良くする弟に愕然とし、「んだよ 意味が分かんねぇ」との台詞でおわる。それは視聴者の台詞だ。
・ストーリーの根幹が解決されずに終わる:魔法戦争が起こった原因の解決、主人公と弟の対立(と過去の事故の真相)など、作品の根幹の問題が解決されずに終わる。
・タイトルの「魔法戦争」とストーリー規模のズレ:タイトルに反して中々戦争が始まらないうえに、戦争の規模が魔法士数十人が戦う代表戦と規模が小さく局所的。ラストレクイエムの魔法範囲は広いのに。。。
・MF的金太郎飴作品:MF作品にありがちな、売れた作品のコピー要素が多い。異世界、魔法、魔剣など。



表現魔法戦争の表現には多くの問題があり、それが画面を滑稽なものにしている。
・戦闘の表現・テンポがおかしい:竹刀がやたら頑丈だったり、目隠ししての剣道、「バカな!他人の魔力を使えるのか」と驚いて攻撃を避けないプロ魔法士など。学院長とメガネの戦いは凄く良かったが。。。
・技名のダサさ(ラストレクイエム等)、分類の不適切さ:ラストレクイエム、メルトプロジェクション、ブラックドアなど捻りのなさ過ぎる英語技名、回避魔法・高速魔法などの分かり辛い分類。
・予告のオリキャラ・魔女っ子マホ子の寒さ:すいません嘘です。







魔法戦争の良い点  


とはいえ、魔法戦争にも色々良い点はあり、特にヒロインの可愛さはMFらしく安定して高い。
・ヒロインがどのキャラも可愛い:ブラコンで小動物的な六、焼き餅と依存を中心としたツンデレが可愛いツグミ、銀髪ツインテール幼女、金髪ロングお姉さん(十の元カノ)、そしてそうしたキャラのコスプレや脱衣やロリ化などヒロインはどれも可愛い。僕が単に長髪好きとも言える。
・作画はだいたい良かった:たまに変な中割はあったが、基本的に作画は安定していた。
・OP・ED・BGMが良い:最近のアニメは音周りだいたい良いよね。
・ストーリーのテンポは良い:異世界転移からバトルなり試験なりやって世界の根幹を説明して戦争で締める流れの速さは良い。
・魔女っ子マホ子:アニメオリジナルキャラのマホ子は視聴者に一時の安らぎを与え、このアニメの見方を教えてくれた。すだち。







アニメの魔法戦争と原作との対比  


トーリーおそらく一番驚かれる部分だが、アニメの魔法戦争は原作1〜6巻に該当する。
 原作 アニメ
 1巻 1話:六との出会い〜崩壊世界に
 2巻 2〜4話:入学〜十との初戦
 3巻 5〜6話:魔法試験〜十奪回
 4巻 7話:悪夢〜永遠との和解
 5巻 8〜9話:ウイザードブレスの真相〜学校崩壊※・第二次魔法戦争開戦 ※原作ではペンドラゴン本部
 6巻 10〜12話:母との修行〜トレイラー本部侵入〜月光との決戦〜タイムスリップ
通常は原作3〜4冊をアニメ1クールで消化するところ、魔法戦争はかなりの早さで原作を消化していた。
特に1,4巻は1巻を1話にまとめており非常に早い進行となっている。
アニメから入った身としては、もしあの1巻が3話かけて作られていたら作品の方向性が分かる前に視聴をやめていたと思うので良いアニメ脚本だったと思う。
4巻の永遠の話についても、アニメでは後々特にフォローされない話なので1話でよかったと思う(飛ばしても良かった)。
また、アニメでは5巻以降のペンドラゴン本部への避難を描写せずに終わらせている。
これは話を圧縮するために措置だと予想される。予想外だったのは、圧縮しても話が終わらなかったことか。


正直なところ、アニメの魔法戦争の脚本は原作の範囲内でかなりよくまとめられており、良く考えられた脚本だと思う。
アニメの魔法戦争のストーリーについての問題は、殆ど原作が原因となっている。



キャラクター殆どのキャラクターに大きな変更はないが、唯一磯島だけかなりマイルドに調整が加えられている。
原作の磯島はタザリア王国物語のリネア様を彷彿とされる即キレ残虐嗜好(でも手は出さない)のきついヒロインだったが、さすがに不味いと思ったのかアニメでは軽い嫉妬程度の描写だった。
見てください、この今にも六を階段から突き落としそうな磯島さんを!!! 原作ではいつ武の脚を切り落とすかヒヤヒヤしました。







原作の魔法戦争の問題点  


原作の魔法戦争はそれぞれの1巻1巻は面白いが、全体の構成に大きな問題を抱えている。
話の前提として、まずアニメ以降の7巻以降は武の過去世界の話と、ちょっとした現代の話(戦争の後始末など)になっている
 7巻:過去で月光に保護監禁された武(月光の行動はわけがわからない)が、ウイザードブレスの評議会の偉い人(ブレイブ)に救出されてその家にお世話になる。娘のソフィアと出会い、未来知識で和馬の戦争を防ごうとする話。
 8巻:永遠がソフィアの母親だったということが発覚する。武の行動もむなしく第一次魔法戦争が勃発し、以前同様に武の両親が死亡する。ウイザードブレスの内ゲバでブレイブ家が襲撃され、ソフィア以外が死亡する。現代で磯島や六が合流。
アニメの世界からの消失エンドの後にこの展開となっているため、既刊の中で話を区切る場所がどこにもない。
また、多く貼られた伏線や問題(月光の事故の理由、和馬の正体・目的、永遠の今後、磯島との関係)は現在も回収されずに謎のままになっている。
これは著者の前作のタザリア王国物語でもあった問題で「話は大きく進むが、問題が何一つ解決されないまま状況だけ動く」物語が連続しているのだ。
魔法戦争でも異世界への移動、十の奪還、魔法試験、魔法戦争、過去の学園と状況や物語は進んでいるが、問題は殆ど解決していない。






アニメ魔法戦争はどうすれば良かったのか  


こうした原作を踏まえると、アニメはオリジナル展開をした方が良かったのではないかと思う。
原作のどこで切っても中途半端な終わり方となり、また謎が解決されないのでは、アニメの視聴者に対してそれをそのまま見せるのでは大きなストレスを与える。
であれば、灼眼のシャナの1期や一週間フレンズのように原作からある程度のつまみ食いとオリジナル補完を行ってもよかったのではないか。
月光を倒し、母親から事故の真相と謝罪を聞いて、回避魔法の本来の意味を知るといった話で終われば、アニメ視聴者もある程度は納得できたのではないのだろうか。
原作ファンのオリジナル展開批判が発生することは仕方ないが、アニメはアニメとして完成していてほしい。
そしてそれは、商業的な問題も孕んでいる。










以下、余計な話;

商業性を考えたライトノベルの書き方  


3つの話を前提としておきたい。
ライトノベルはアニメ化によって大きく売上(部数)が伸びる。それがどんな作品でどんなアニメ化であれ、アニメ化の影響は大きい(例えば5分アニメのニャルアニhttps://www.youtube.com/watch?v=shvPSV2horYでも原作部数はよく伸びていた)
・アニメ化の売上に達していないラノベは1,3〜5巻程度で打ち切りとなる場合が多い。
・下記虚淵玄さんの発言
虚淵:これはネガティブな話になりますが、 原作ありきのアニメ化作品ばかり増えると、その弊害が周辺の業界にも及ぶんですよね。
特に自分はライトノベルについての危機感があるんですが、それは作家がみんなアニメ化を意識してしまうんです。
みんなアニメ化されることをゴールに、アニメの企画書のつもりで書いていないか?
小説の中身で勝負をしようという発想を見失っていないか?って思うと悲しくなってくるんです。」


虚淵さんが言うように作品の中身で勝負をすることは当然重要だしそうあってほしい。
しかし、アニメ化の成功による売上を考えると4〜6巻のどこかで物語を一段落させるか、一段落させる別の終わり方を考えておく必要があるのではないかと思う。
(2クール行ける売上なら、8〜10巻のどこか)


魔法戦争と同様の問題を孕んでいる作品として、今期放送されるMFの「精霊使いの剣舞」は12巻で一区切りする作品だが、これがどうアニメ化されているかは見ていきたい。
また、HJの六畳間の侵略者も現在16巻まで出ていながら区切りのない作品なので、こちらも。
健速さんの執筆能力なら、各キャラ紹介話後になにかオリジナルやって上手くまとめてくれるんじゃないかと期待している。






web小説作品の危うさ  


現在のトレンドとなっているweb小説(SAO、魔法科、無職転生)は特にこうした問題を抱えている。
もともとweb小説は物理的な本と違いページ数の制約がないため、比較的長くだらだらと続く傾向がある。
web小説読みであれば、数百話まで続いて話が大して終わっていない有名作品の心当たりが多いと思う。
SAOもアシリゼーション編以降はそうしたweb小説らしいだらだらした感じになっている。


個人的に危惧しているのは、こうした人気web小説は事前人気の高さからアニメ化以前にも大きな売上を出すため比較的アニメ化されやすく、しかしアニメ化された際に物語を適切に終わらせることができず、面白くないアニメが増えてラノベ業界が森下がることだ。
(web小説で人気→ラノベ化→ファンが買うため他新作より売上が大きい→アニメ化されやすい という流れ)
例えば、魔法戦争と同じくMFから発売されている無職転生http://ncode.syosetu.com/n9669bk/は素晴らしいペースの連載で現在194話まで進んでいるが、この作品の本筋ともいえる人神の話が始まるのは153話からだ。
この作品はおそらく2015年にアニメ化されると思うが、アニメ化の際にどうやって脚本を作るつもりなのだろうか。
1クールでそのままアニメ化では転生、魔法練習、家庭教師、フィアット領消滅、新大陸冒険とやって「そして彼らの旅は続いていく・・・」となり全ての問題を放り投げることになる。
これは過去のラノベ作品が抱えていた「あまりにも原作と違うアニメ化をされて原作ファンが失望する」と逆の状態で、「原作通りにアニメ化したら話が終わらずに意味不明に終わり視聴者置いてきぼり」という状態になる。
アニメ化が難しい作品は多いが、どうか原作ファンもアニメ視聴者もどちらも満足できる作品が作られて欲しい。

アイマスの千早です