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ワインとかITとかとか。

肉雲丹鮨、そしてソドム

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※普通のお鮨についてはこちらをお読みください;

srdk.rakuten.jp

 

 

雲丹の肉巻きが勝どき・かねますから(多分)始まり、ブームを迎えている。

それを鮨に仕立てた、肉雲丹鮨もよく見られるようになってきた。

tabelog.com

しかし、良いお鮨屋さんがやっていないせいか(肉なので当然だが)、どうも単純に雲丹と牛を合わせているだけの店が多い。

かねますもそうだが、雲丹と大葉を牛で巻いてそれで終わり、では素材の良さが十分に発揮されていない。もちろん美味しいのだが。

 

ということで、より美味しく食べれるレシピ、そして友人にその肉欲の乱れ方からソドムの街と呼ばれた肉雲丹トリュフのレシピを紹介します。

なお、より美味しく食べられるよう、にあり余すことなく情報を書きたいので、長くなります。

 


<肉雲丹鮨>

良い鮨とダメな鮨の大きな違いの1つは温度にある。

肉鮨は、ネタもシャリも暖かくするとより美味しくなる。

また、ネタである肉と雲丹の味が強いので、通常のシャリよりは赤酢を使ったシャリの方がよく合う。

 

材料(15カン分):牛三角バラブロック 200g、雲丹100g(弁当箱半分or塩水ウニ1パック)、塩、米、鮨酢、赤酢、グラニュー糖

道具:ANOVA、包丁(できれば柳刃)、飯台、刷毛

原価:合計4,500円程度、300円/一カン 

 

ミツカン 三ツ判山吹 900ml

ミツカン 三ツ判山吹 900ml

 

 

牛三角バラを選ぶ理由は、サシがかなり入っていて脂が美味しく、柔らかいため。値段も100g1200円前後と手頃。肉鮨では焼肉のように焼かないので、あまり脂を強く感じない。赤身肉系は雲丹に合わないのでお勧めしない。

 

1. 包丁を研ぐ

2. ANOVAセットし、56℃まで温度を上げる。

3. 冷蔵庫から出した牛三角バラに重量の1gの塩を振る。ジップロックにいれ、空気を出してロックする。

4. ジップロックした牛三角バラをANOVAで加熱する。200gの場合の肉の厚みはだいたい3cmなので、厚みから考えると2.5時間だが、脂肪の多さを考えて3.5時間以上の加熱が必要。

//料理研究家Douglas Baldwinによる鶏/牛豚羊の殺菌時間テーブルを参照。55℃がセレウス菌生育限界温度。なお、肉を常温に戻してからANOVAで調理するのは、細菌が増える時間を増やすだけなので不衛生。ANOVAに早々に入れて、細菌が増える温度帯を素早く通過させる方が良い。

5. 食べる80分前に、お米をといで、ザルにあけて水切りした状態で15分置く。

6. お米を釜に戻し、水分量を通常の85%にして炊飯する。

7. ご飯が炊きあがったら、試食して硬さを確認。ややシンが残る程度がベスト。ご飯をかき混ぜて、10分蒸らす。

8. 蒸らしている間に、沸騰したお湯を用意して飯台に注ぎ、飯台を暖める。暖まったら水切りし、表面をキッチンペーパーで拭く。

9. この辺で雲丹を冷蔵庫から出して温度を上げ始める

10. 飯台にご飯を2合よそう。2合くらいが酢飯をつくりやすい。

11. ご飯を多少広げ、グラニュー糖5g、鮨酢60ml、赤酢60mlを順番にかけ、ご飯粒をつぶさないようにチャーハンを混ぜる感じで、縦切りで混ぜて赤酢シャリを作る。混ぜ終わったら、濡れたキッチンペーパーをかけて乾燥しないようにしておく。

12. 沸騰したお湯を用意して、肉を取り置くためのお皿を暖める。鮨を置く皿も同様に温める。

13. ANOVAから肉を取り出し、水分を拭き取った後に包丁で1~1.5mm程度の薄切りにする。慣れが必要。先ほど暖めたお皿のお湯を捨て、水分を拭き、肉をのせる。

14. 手酢を用意して、肉鮨を握る。

15. 並べた肉鮨の上に雲丹を置いていき、最後に醤油を刷毛でかける。バーナーで多少炙っても良いが、温度管理が完全にできているのならしない方が良い。また、あるのなら備長炭で上から30秒程度炙ると良い。

 

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なお、写真映えを重視するなら肉の上に雲丹を置いた方が良いが、味を優先するのなら、通常山葵を使う位置(つまり肉とシャリの間)に雲丹を置いた方が美味しい。この写真では巻いてるけど(笑

また、細菌の繁殖を考えて、ANOVAから出してから30分以内に肉を全て食べ終わった方が良い。ANOVAから出して、肉をカットしてから時間が経ちすぎていたら食中毒を起こす可能性があるので、その場合は表裏焼いてから食べるようする。

 

 

<ソドムの街>

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これは自宅に食べに来てくれた某音楽雑誌編集者の友人に出した際に「まるでソドムの街みたいだね」と評された料理。

肉鮨のレシピ13迄は同じで(シャリは炊く必要がない)。13で薄切りした肉を大きなお皿(暖めておく)に並べ、その上に雲丹をのせ、醤油を少し垂らし、最後にトリュフをふりかけたものになる。

黒/白トリュフの美味しい季節、10月下旬~2月につくって欲しい一品。

とはいえ、予算や季節に影響されないレシピとして、サバティーニのトリュフパウダーを使うレシピを第一にお勧めしたい。

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これも並べて醤油をかけてパウダーを書けるだけ。牛・雲丹とトリュフは恐ろしく相性が良いので、脳がとろけて「味・・・・あじ・・・・がする・・・・・・・」としか言わなくなる。

 

 

なお、牛雲丹鮨トリュフパウダーは、シャリとトリュフパウダーが反発するのであまり美味しくない(パウダーでない黒トリュフであればいくらかは良い)。

トリュフではなく大葉を使うとさわやかな仕上がりになる。

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<雲丹の買い方について>

レシピと同じくらい重要なのが、雲丹の買い方。

 

皆さんは不思議に思ったことがないだろうか。スーパーで買う普通の雲丹はいまいち美味しくなく、塩水ウニは割高だが美味しく、デパ地下には3万する雲丹の弁当箱が並んでいるがとても買う気にはなれない(※塩水雲丹は通常60~90g、弁当箱は200~300g)。インターネットで買う塩水雲丹も高い。しかし、ある程度のお鮨屋さんに行くと美味しい雲丹が出てくる。この雲丹は何処で売っているのか。

 

築地魚群 塩水うに 1箱

築地魚群 塩水うに 1箱

 

 ↑割高な塩水雲丹

 

これは、おそらく築地(市場)にしか売っていない。

販売の偏りの原因は、おそらく雲丹の価格と需給の問題。雲丹は生本マグロと同じくらい高く、しかも痛みが早いので、普通のスーパーで売れる商品ではない。売るにしてもチリ産のものを少量で1980円でだが、美味しくないので売れ残り、半額にで売ることになる(そして初期価格に反映される)。ちなみにが雲丹は鮮度が落ちると苦みしか残らないので、元々さして甘みのないチリ産の半額物は苦みの塊になる。見た目の色が悪くなるので辛い。

 

デパ地下では塩水が3000~6000円くらいで売っているが、弁当箱サイズは1万円前後になり(希に売ってる)、これもコンスタントに売れるかどうかは怪しいので、何かを期待して3万くらいの特別用途の雲丹を売る。買ってる人を見たことないけど。

しかし何れにせよ、デパ地下で雲丹が入荷したその日に1~3万出して買うか、塩水雲丹を買わない限り、美味しい雲丹を食べることは出来ないというのが現状だ。その結果がネット通販で、どこを見ても塩水雲丹の販売が上位を占めている。ミョウバンはトラウマものの添加物の扱いをされている。

しかしこれは大きな過ちで、塩水雲丹は賞味期限を極限まで短くする代わりにレベルを維持している割高な品物で(味も正直水っぽさがある)、最高の雲丹、もしくはコスパの良い雲丹は弁当箱になる。

(自宅で食べる話なので、現地で食べる殻付きの雲丹については除外)

 

 これを唯一まともな価格で買えるのが築地市場などの各種市場で、一部の季節を除けば5000円前後で美味しい赤雲丹の弁当箱を買うことが出来る(これがもしデパ地下に並ぶとなると1.5万とかになる)。たいていはロシア、北方四島、北海道のどこか産だが、甘み・味わいの深さがしっかりしていて、当然ミョウバンの苦みなど感じさせない。

 

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※←が赤雲丹(馬糞雲丹)、→が白雲丹(紫雲丹)

 雲丹は赤と白の2種類あるが違いは品種で、赤は馬糞雲丹、白はムラサキウニ。赤のほうは強い甘みの味わいを、白のほうはふんわりと溶けて静かに広がる食感が楽しめる。個人的には赤しか買っていない。白も最高クラスは美味しいが、そうすると予算が赤の5倍とかになる(安い白は上品だが控えめな味なので物足りなさがある)。

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 僕が良く買いに行っているのは築地の神奈辰(番地:3027→豊洲8004)さんで、10時の一般入場後も良く対応していただけるし、保存状態も良い。あまり多く巡った訳ではないが、他の店よりも良心的な品質と価格の印象。最高の雲丹を買いたいなら山治(2067→豊洲1001,2005,4001)さんだが、数万以上する(今年の最高値は白雲丹一箱8万だった)し、お鮨屋さんルート以外でそのレベルが買えるかは不明。

www.asahi.com

 

 雲丹の値段は季節でかなり変わり、特殊な正月相場を除いても、安い時と高いときで2,3倍の価格差がある。僕の普段買っている、入荷が最新の雲丹の価格帯は4,000円~12,000円。正月はこれが2万とかになる。このブレは諦めるしかないので、会費で調整するしかない。下手に安い雲丹を買おうとすると、賞味期限の近づいた雲丹を掴まされることになり、それは安くても苦みしかしない、雲丹として失格のものなので、買わずに雲丹の量を減らすか、予算を上げるかどちらかにした方が良い。ちなみに買いに行くときは保冷バッグを持って行った方が良い。氷をつけてくれるが、状態の変化は最小限の方が良いので。アイスやチョコ用のを流用すれば良い。





<余談、その他の風紀の乱れた料理>

・雲丹蟹そうめん

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昆布出汁を取り、僅かに醤油を加えて汁を用意。素麺を茹で、冷やして汁に入れ、上に蟹をのせ、その上に雲丹をのせる。

コピー元は乃木坂しん

tabelog.com

 

・白子いくらそうめん

筋子を買ってきていくらを作る。白子を茹でてマッシュする。素麺を茹で、マッシュした白子と混ぜて(少し出汁も混ぜる?)、上にいくらをのせる。

カラスミキャビア等々色々な魚卵があるが、この白子といくらの組み合わせがベスト。

コピー元ははらまさの通風そうめん。

 

tabelog.com

レシピは決まっているがまだ白子の時期なので作っていない。。。

 

※冒頭の皿は、小林登氏の漆木皿。

kokuten.com

www.ac-yoshinoya.com