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ワインとかITとかとか。

書評:『冬の喝采』『すすんでダマされる人たち』

『冬の喝采』 黒木 亮 (著)
http://www.amazon.co.jp/%E5%86%AC%E3%81%AE%E5%96%9D%E9%87%87-%E9%BB%92%E6%9C%A8-%E4%BA%AE/dp/4062150417


経済小説家として有名な黒木 亮が、自身のマラソンランナーとしての過去を振り返った自伝。
スポーツものらしい起伏/栄光/勝利はそれほどないが、ゆっくりとした記述と時間の変化に夢中になった。
スポーツものはトップクラスのスポーツマンが書くことが多いが、この小説で書かれるのは、才能がなく、努力で3位とか5位を獲得した著者の淡々とした/素朴な/弱々しい練習の日々である。
高校時代では、道内ではトップでも日本ではまだまだであること、親友の事故、自身の故障が描かれ、好きな陸上を続ける上での葛藤や苦しさがある。
大学時代に入ってからは、トップランナーの瀬古 利彦に対する憧憬がひたすら描かれ、鬼のような監督、厳しい練習、度重なる故障により、陸上から少しずつ遠ざかっていく心境が描かれているように感じた。
この陸上から遠ざかっていく心境は、エピローグ辺りの生みの親との再会において、淡々とした心境に至ることに影響していたと思う。
というか、この小説のヒロイン(?)は間違いなく瀬古 利彦。文通とか、教室でのプチフラグとか、全て折ってるし。


スポーツ小説(?)はあまり読まないが、オススメできる一冊。




『すすんでダマされる人たち ネットに潜むカウンターナレッジの危険な罠 (単行本)』ダミアン・トンプソン (著),
http://www.amazon.co.jp/%E3%81%99%E3%81%99%E3%82%93%E3%81%A7%E3%83%80%E3%83%9E%E3%81%95%E3%82%8C%E3%82%8B%E4%BA%BA%E3%81%9F%E3%81%A1-%E3%83%8D%E3%83%83%E3%83%88%E3%81%AB%E6%BD%9C%E3%82%80%E3%82%AB%E3%82%A6%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%8A%E3%83%AC%E3%83%83%E3%82%B8%E3%81%AE%E5%8D%B1%E9%99%BA%E3%81%AA%E7%BD%A0-%E3%83%80%E3%83%9F%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%88%E3%83%B3%E3%83%97%E3%82%BD%E3%83%B3/dp/4822247155


いつの時代にも存在するデマが、蔓延する構造を推察した一冊。
例としてあげられるものは↓のようなもの。
◎9.11は米国政府が仕組んだ陰謀だ。その狙いは中東で戦争を起こすことにある。
エイズ・ウイルスはアフリカ人を根絶やしにするために CIAの研究所で開発された。
サプリメントをたっぷり摂取すればガンを予防できるし、 エイズ治療薬より効果がある。
◎キリストは生き延びて結婚し子孫がメロヴィング朝を興したが 教会はこれをひた隠しにしている。


あくまでデマが蔓延する構造を記述することを中心としているため、それぞれのデマの反論材料を示すことは殆どないのでその点は注意。
マルコム・グラッドウェル (著), の『ティッピング・ポイント』と、統計学の悪用方法、確率論が多くの人間の直感に反することを理解しているのなら、理解は容易。
十分に客観的な検証すれば多くのデマは否定できるが、webによってそのデマの浸透速度が加速しているってのは面白い。
最近/.Jでトピックにあがった、(J・ソロスの言う)再帰性的構造によってデマをもっともらしい真実にしてしまうのは、マーケットと通じるところがある。
Wikipedia をメディアが引用し、誤情報に「情報源」が発生
http://slashdot.jp/it/article.pl?sid=09/02/13/0114241


アロマテラピー911の真実は知り合いにも進行してる人がいるのが痛い。
しかもそのデマを積極的に広めなくてはという責任感に駆られていることが多い。
以前モルモン教の集会に行ってたときは「聖霊」がどうとか、GEで部長クラスとして働いてる人に真顔で言われたことがある。


スーパーフードは、お気に入りのウエスティン東京が特集として打ち出しているのが痛いなぁ。
まぁ、売れはするんだろうし、野菜好きの私にはありがたいけど、なんだかなぁw
ザ・テラスの新しい朝食 「スーパーフード」
http://www.westin-tokyo.co.jp/restaurant/theterrace/#71