World Digger

ワインとかITとかとか。

「「フランス料理に日本酒」が増えている理由」が出鱈目過ぎる その2

追記:その3も書きました。

nanoha3.hatenablog.com

 

ご本人(未確認)がtweetされてるのを観測してしまったので、コメント。

 

 

 

その「得手不得手」と言っていることが出鱈目だという話に、反論ではなく「極端な考え」と言われるのは発想が飛躍していてユニーク。

僕からすれば、あの記事こそが極端な内容。

また、僕は特段予算の高いワインをペアリングしろとは言った覚えも無い。

ボルドーブルゴーニュ以外の地域のフランスワイン、オールドワールドやニューワールドのワインの多くは、輸入されてくる日本酒と大した価格の違いがないか・安く、また選択肢は非常に多い。

現地で上代10~15EURあたりから美味しくて面白いワインはいくらでもある。

ワインが不得意な場面、というよりは「新しい構造の料理」が増えている、ということについてはその通りだが、そのワインって「伝統的ワイン」しか見えてないのでは?というのは元の記事に書いたとおり。

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/NARISAWA 金華豚のスープに僅かにボイルしたスカンピ アンドレ・ペレ コンドリュー(フランス・ローヌ地方) と素晴らしいマリアージュ

 

 

 

 

そうしたフランスのソムリエ達が言っていることをそのまま記事にしているだけであれば、ワインに詳しくないかと思うので、僕の思想が極端かどうかを判断するほどの物差しを持っていないのではないでしょうか。

「不得意な要素」に突っ込み所はありますが置いといて、「ワインが合わない皿」に日本酒や他の酒を選ぶことには何の問題もないですが、そこで考えられてる「ワイン」が本当に現代の多様なワインを含めて考えているかどうかは疑問です。

また、日本酒は食材とケンカしにくい酒なので、安易なマリアージュと珍しさだけでピックするソムリエも良くいます。

また、ワインやビールや日本酒をちゃんぽんすることを嫌がる方は1~2割います。

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/ウィーン・シュタイラーエック スカンピとヴェルリッチ エックス・ヴェロ2 2006(オーストリア・ソーヴィニョンブラン主体)

 

 

 

 

「ワインと合うように乳製品や油を使っていた」この考え自体はずいぶん古い考えで、最近のマリアージュを勉強していない人の発言だなー、という感想です。

クラシカルでもモダンフレンチでも、そうでないマリアージュは幾らでも考えられています。

酢飯とワインを合わせるのが好きな人、というのは僕が書いた鮨とワインのマリアージュへの揶揄かと思いますが、ソムリエもいて大将もワインに非常に詳しい紀尾井町・三谷さんのマリアージュを否定するのは、「一流レストランのソムリエ」を一方で持ち上げているのなら「好みの世界だけど」と言い捨てるには無理があるのでは?

鮨とビールのマリアージュは、僕がビール苦手なので知りませんが、一般的にはあまり合わないと考えられていると認識しています。

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/小十 名物の鮎の塩焼きと黒ビール このくらいの量のビールなら飲めるし、これは素晴らしいマリアージュだった。これもある意味新しいマリアージュの1つ。

 

 

 

 

そうした工夫をする料理があるのも知ってますし、ソムリエ/シェフの方々と仲が良いので、よくマリアージュのためにどういった工夫をされたか、ワイン会やソムリエ/シェフとの個人的な食事の席でお話しは良く伺っています。

ソムリエ/シェフにコラヴァンでワインを全て事前テイスティングしていただいてワイン会を開催させていただいたことがありましたが、その時などは料理を決めるまでの思考を同じワインの味を経験した上で共有いただけて非常に面白かったです(シェフにとっては大変な試みだったと思いますが)。

現場の人にお話を聞いても、ワインに詳しくないと程度が理解できないのではないでしょうか。

また、僕はそこそこ料理をするので、店レベルでは無いほどにせよ、マリアージュをどうさせるかはそれなりに悩んでいますし、上手く行ったことも失敗したこともあります。

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/今まで伺ったレストランの中で最も先鋭的なお店、ル・クラビエール有栖川。元カンテサンスのソムリエがオーナー。牡蠣とアードベッグ。この程度はジャブ。もちろんワインも日本酒もビールも出ます。

https://tabelog.com/tokyo/A1307/A130702/13151695/

 

  

 

僕は基本的に一流・先進的なレストランのソムリエ達が色々悩んで勧めてきたペアリングの経験を元に記事を書いているので、少なくとも僕の記事で書いているようなことは日本ではされています。

それ以上に興味を持った部分では、マリアージュ実験会を自分で主催して、そこから得られたセオリーを別のワイン会で価格に合わせて実現したりもしています。

 

なお、僕は元々ただの愛好家でしたが、少し前からある有名レストランのワインリストにアドバイス・手伝いしていますので、立ち位置としては「一流レストランのソムリエ」寄りになるかと思います。

問屋/インポーターの在庫、仕入れ価格、値付け、セラーの容量、ペアリング、オペレーション、季節、シェフとのコミュニケーション、景気等々、若輩者ですが多少は理解しています。

なお、こうしたポジションの違いで「分からないでしょ」と語るのは、例えば「猫の権利を主張するには猫でないとダメだ」的な話なので、考えとして残念です。

 

なお、多くの場合愛好家の方がソムリエよりワインに詳しいのがこの業界の構造上の問題です(ソムリエの給与はあまり高くなく、高いワインは異常な価格のため飲めない)。

また、残念ながら一流レストランのソムリエといえども、素晴らしいソムリエもいるし大したことのない人もいるというのが実情です。

例えば、熟成ワインの適切な抜栓・サーブをできるソムリエは殆どいません。

 

ワインに詳しくないと、そうしたことが分からないかと思いますので、聞いてまとめただけの信憑性が伝聞レベルの記事ではなく、取材対象を理解して、裏付けのある記事を執筆された方が良いかと思います。

 

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/昨年主催したシャンパーニュと出汁のマリアージュ追求会。マロラティック発酵あり/なし*BdB/BdN+マロありロゼの5種類と、鰹/昆布/貝/鱧/豚/スッポンの出汁のマリアージュ相性を追求。非常に面白かった。